母が亡くなった後の手続きを自力でやりきったので記録しておこうと思う (4) 遺産分割協議書の作成

(1) (2) (3) のつづき。銀行口座の凍結を解除し解約するためには相続人全員の合意がとれている必要がある。それを証明するための遺産分割協議書を作成した。

前提

  • 僕の両親は離婚していて、その後母は再婚していない
  • 兄弟は3人。長男の僕と次男の弟、そして長女にして末っ子の妹がいる。
  • 僕は東京住まい、弟は兵庫県で父と住んでいて、妹は大阪で母と住んでいた。
  • 兄弟仲は悪くない状態になっている
    • 過去は一言も口をきかないレベルで、母を通じてお互いを知るという状況だった。
  • 不動産などの大きな財産はなかった
  • 母からの遺言書は見つからなかった

役に立った本

インターネットで色々調べたけど、それぞれが書きたいことを書いている感じで何が正しいのか判断できなかったので、まとまってる本を買った。

大切な人が亡くなった後の手続き 完全ガイド

大切な人が亡くなった後の手続き 完全ガイド

免責事項

この記事はあくまで個人の体験に基づいて記載されたもので、法律の専門家の監修を受けたりしていません。 内容についての責任および、この記事に記載の方法を実践した事による責任は負いません。 お困りの場合はお近くの法律の専門家にお問い合わせください。


亡くなると銀行口座が凍結される

人が亡くなった場合、その人の持っている銀行口座は凍結されるようになっている。こうなると引き落としも振込も、解約もできなくなる。これは相続人のうち誰かが持ち逃げしたりしないようにするための措置ということらしい。ただ、プライバシーの保護が叫ばれる現在では銀行も一般人の死亡を知る方法がないため、窓口に行ったり電話口で「この人亡くなりました」って言わない限りは一般的には凍結されない模様*1

例えば(きちんと相続人全員の同意を取った上で)葬儀代を引き出したり、カードの引き落としがある場合などはその後の手続きを待つのもアリだし、持ち逃げしそうな人がいるなら速攻で銀行に連絡して止めてもらった方が良い。うちの兄弟には持ち逃げするような人はいなかったので、一通り落ち着いて、残高証明書をもらうときに全部止めた。

銀行で残高証明書・相続手続きの書類をもらう

各口座の残高証明書をもらいに行く。これはその人の口座の残高がなくなったタイミングでいくらだったかというのを証明する書類。1通700円から1000円程度かかる。兄弟全員が容易に合意できる状況であれば通帳の残高を確認する方法でも良いと思われるが、後々のトラブルを避けるために全部取っておいた方が良さそうと判断して、全部取った。

定期預金があったり、預金が億単位であったりする場合は既経過利息というのを計算してもらわないといけなかったりするらしい。

残高証明書をもらう手続きは銀行によって相続の手続きは少しずつ異なるが、銀行の窓口に行って「相続用の残高証明書と手続き用の書類ください」と言って手続きしてもらうところに変わりはない。このとき、次の物が必要になったりならなかったりする(銀行によって必要な物が異なる)。

  • 対象となる口座の通帳・キャッシュカード
  • 戸籍謄本一式もしくは法定相続情報一覧図の写し
    • 法定相続情報一覧図の写しで対応してもらえない銀行や担当者もある*2ので、事前に確認するか戸籍謄本一式も持ってる方が安心。
  • 印鑑証明書、実印

うちの母が持っていた銀行口座はゆうちょ銀行、某信用金庫、三菱UFJ銀行みずほ銀行だったが、すぐに証明書が出てきたのはゆうちょ銀行のみ。それ以外の銀行の場合口座店や相続センターに一度送った上で郵送されてくる仕組みになっている。

なお、今回手続きした中では三菱UFJ銀行だけ特殊で、窓口に行く前に 相続センターに連絡 しておく必要があった。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書は、その人の遺産をどのように分割するかというのを取り決めた結果を記載する書類。

いろいろなフォーマットを参考にして以下のような形にした。

遺産分割協議書

被相続人   ●● ●● (平成30年5月●●日死亡)
最後の本籍地 兵庫県●●●●●●●●
最後の住所地 大阪府大阪市●●●●●●●●●●●

上記の者の死亡によって開始した相続の共同相続人である(僕の名前)、(弟の名前)及び(妹の名前)は、本日、その相続財産について次の通り遺産分割の協議を行った。

1   相続人代表を(僕の名前)と定める。

2   下記の預貯金は、被相続人名義の口座は解約し、すべての口座から払い戻しを受け、相続開始時の残高の合計から被相続人の残債償還、葬儀、満中陰法要、納骨、返礼及び手数料等必要経費に要した費用を差し引いた上で(僕の名前)、(弟の名前)、(妹の名前)がそれぞれ3分の1ずつ相続する。ただし、分割において生じた端数については、(僕の名前)が相続する。

某信用金庫 大阪の支店   普通預金 XXXXXXX ((僕の名前)名義)
某信用金庫 兵庫の支店   普通預金 XXXXXXX
三菱UFJ銀行 兵庫の出張所 普通預金 XXXXXXX
みずほ銀行  兵庫の支店   普通預金 XXXXXXX
ゆうちょ銀行 通常貯金 記号 XXXXX 番号 XXXXXXXX

3   前項における預貯金に関する手続きは相続人代表である(僕の名前)が行い、払い戻しを受けた金額を(弟の名前)、(妹の名前)の口座に送金手数料を差し引いて送金するものとする。

4   現金 金XXXXXX円は、某病院の入院費に充てた残額の金XXXXXX円を(僕の名前)が相続する。

5   本協議書に記載のない遺産・債務及び後日判明した遺産・債務については、(僕の名前)、(弟の名前)、(妹の名前)が再度遺産分割協議をして遺産・債務を取得・承継するものとする。

以上の内容で、相続人全員による遺産分割協議が成立したため、本協議書を3通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。

平成30年7月●●日

共同相続人(相続人代表・長男)
住所 
氏名 

共同相続人(二男)
住所 
氏名 

共同相続人(長女)
住所 
氏名 

これに相続人全員で記名して、実印を押印する。その後の手続きには相続人全員の印鑑証明書が必要になるので全員にもらってきてもらう。印鑑証明書は結果的に各自1通ずつで足りた。

これは共同相続人の間での契約書という形になるので、ちゃんと契約書のテイをなさなければならない。2ページになったので、契印が必要だった。せっかくだったので、製本テープを買ってきて製本もしてみた。割印もお忘れなく。

boxil.jp

気をつけた点

内容はフリーなので本当に悩んだ。ネットの記事を色々見て、気をつけた点を書いておく。

  • 代表者を定める項目を用意した。手続きがスムーズになる効果があるらしい。
  • お金で分割すると端数が出るため、その端数の処理についても述べておかないと引っかかる場合があるらしい。
  • 誰が手続きするのかというのも定めておかないと引っかかる場合があるらしい。
  • 銀行口座については今回は「すべて解約」を選択したが「名義変更して引き継ぐ」という処理も可能らしい。銀行で可否が異なりそうなので、できるかどうか聞いておいた方が良いと思う。
  • 協議書にない遺産については「●●が相続する」という形で書いて再度の協議を避ける方法と、今回のように「再度協議する」という処理の2種類をよく見かけたが、前者のようにするともし負債が出たときに書かれた人が全被りしないといけなくなるリスクがあるので今回は再度協議する方法を選択した。

名義預金 (子の名義の預金)

母は僕名義の口座で多くのお金を残していた。口座を開いたのは僕だったが、諸般の問題で公共料金の引き落とし用として通帳を預けていた。ここにお金が残されていることは亡くなるまで知らなかった。

この場合、実質にそのお金を作り出したのは母なので、名義が僕だったとしても相続の対象となるとのこと*3。なのでこの連載の第1回であった、葬式費用をこの口座から出していたのは、もし僕が独断でやっていたのならNGとなる。今回は口頭ではあったが兄弟3人で合意した上で引き出していた。

しかも、この方法で残された預金はその後の銀行での手続きがややこしくなる可能性があるので、もし子供のためにという形でこの方法をとるのは避けた方が良いと思う。(詳細は次回に)

保険金と法定相続分が不均衡だった点について

一般的に、生命保険については民法上の相続財産にはならないため、分割対象にはならないとのこと。

今回、母が残してくれた預金の金額が、コープ共済の死亡共済金として支払われた金額とほぼ同じくらいだった。死亡共済金には受取人指定はなかったが契約上にあった受取優先順位が適用されて同居していた妹が受取人になった。

死亡共済金については妹が全取りすることになり、更にそこに預金の法定相続分の1/3を受け取ると、僕と弟より4倍のお金を受け取ることになる。こういうときは「法定相続分と比べて著しく高額の死亡保険を得る場合」という特別受益として処理して妹の取り分を減らすこともできる可能性もあったのかもしれない。

しかし、母をずっと一緒にいて見てくれていたという功労もあるし、妹は安定した職に就いていないという不安面、あと妹を溺愛していたという母の意向もあるだろうと考えて、そのまま処理することにさせてもらった。

相続税について

相続すると相続税というものがかかる。生命保険の死亡保険金は遺産分割の対象にはならないが、みなし相続財産として相続税の計算には入ってくる。

ただ、基礎控除金額が3000万+(600万×法定相続人の人数)とかなりデカイ。更に生命保険は最大で法定相続人の数×500万円を非課税にできるとのこと*4。 不動産があったり、被相続人がすごい資産家だったりする場合は注意が必要だと思うが、今回の場合は余裕で基礎控除範囲内だった。


次回は最終回。銀行での実際の手続きと総括をしたいと思う。

*1:よっぽど有名な方だったり新聞に載ったりした場合はわからない

*2:みずほ銀行で戸籍謄本を要求された。公式には法定相続情報一覧図の写しで対応できることになっているが、窓口の担当者が知らなかった模様。

*3:もちろん相続税逃れを避けるため

*4:なので基礎控除超えそうな場合は死亡保険金として受け取れるようにしとくとお得らしい